さて最近話題の「月面X」のご紹介です。最初に申し上げておくと2019年のこれからの月面Xはあまり条件は良くありません。ただ、全く見えない訳ではないので、今度のチャンス6/10(月)14時頃(昼間なので難しいですが…)に備えて予備知識を持っておきましょう!
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■月面Xその1 BORG77EDII 撮影:中川昇 ※上を北に表示
月面Xとは上弦の月前後に現れるX状の地形のことです。この写真は夕方に見えた条件の良い時に撮影したものです。月面Xの条件の良い日は通常、年に数回しかありません。
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■月面Xその2 BORG77EDII 撮影:中川昇 ※上を北に表示
上の写真を拡大したものです。Xの文字がくっきりと浮かび上がっています。
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■月面Xその3 BORG107FL 撮影:中川昇 ※上を北に表示
その3は月面Xその1・2とは全く違う日に撮影したものです。よく見ると月の形や海の位置などが微妙に違うことが分かります。これは「秤動」といって月の首振り運動のことで、月は地球にいつも全く同じ面を向けているわけではないことが分かります。この秤動の影響で同じ地形でも毎回微妙に違う角度で見えることになります。これが毎日、月を見る意義の大きな理由のひとつになります。秤動の詳細はこちらから。この「秤動」を意識するようになると同じ月齢でも毎回表情が違うということを認識するので、月を見る目が確実に変わります。
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■月面Xその4 BORG89ED 撮影:中川昇 
これも全く違う日の撮影です。欠け際から離れすぎて、すでにXとは言えない状態ではありますが、この地形が欠け際に来るとXに見えるということを予め認識しておくと次回から発見がしやすくなります。ご来店されたお客様から、月面Xの周辺の地形が良く分からないのでなかなか同定出来ないという声をいただいたので敢えてマークを入れてみました。
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■月面Xその5 BORG77EDII 撮影:中川昇 ※上を北に表示
これは上弦の月がだいぶ西に傾いてきた時に月面Xの見頃を迎えようとした時の写真です。欠け際にうっすらとXの文字が浮かび上がっています。
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■月面Xその6 BORG77EDII 撮影:中川昇 ※上を北に表示
上の月面Xその5の同じ夜のその後がその6です。もはや超低空で月が赤くなってしまっていますが、月面Xは逆にくっきりと浮かび上がってきています。このタイミングが難しいところです。時間が早すぎると空がまだ明るく月がぼんやりしてしまう。時間が遅すぎると月が低くなりすぎてしまう。空が暗くなると同時に月面Xが見頃を迎えるのが理想ですが、それは年に数回しかありません。でもそれを承知の上で悪条件時もそれなりに楽しむのが面白いのです。
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■月面X付近 撮影:東田守生様(大阪府)※上を北に表示
ここで再び東田さんに登場していただきます。相当な拡大写真ですが、月面Xがどこにあるか?分かりますでしょうか?月面Xその4の写真とも見比べてみてください。
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■月面Xの正体 撮影:東田守生様(大阪府)※上を北に表示(文字は中川記入)
月面Xの正体は周辺の4つのクレーターの間にある高地がX状をしていて、それが欠け際に来た時に微妙な高低差と光線の加減でX状に浮かび上がるのです。月面Xに関する東田さんの詳細な記事はこちらから。冷静に考えると地球から見える天体でここまで地形が詳細に見える天体は月以外にはありません。地球でさえ、地球の地形そのものを上から俯瞰して見ることは容易ではないのですから。
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■月面X(下)と月面V(上) 撮影:東田守生様(大阪府)※上を北に表示
月面Xとほぼ同時に「月面V」という名所も見えます。Vの方がXよりも見やすいです。月面Xその1~6(2を除く)にも月面Vがハッキリと写っています。探してみてください。
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月面Vの正体 撮影:東田守生様(大阪府)※上を北に表示
月面Vの正体です。月面Vの東田さんの詳細な記事はこちらから。この辺は他にもトリスネッカー谷やヒギヌス谷など月面の名所が集中しているところです。知れば知るほど様々な光線状態で見たくなる地形です。後日、この地域もご紹介する予定です。

<今回のまとめ>
上にも書きましたが、次回のチャンスは6/10(月)の昼間の14時頃です。今回の月面Xを見る条件としては、高い透明度と望遠鏡の倍率を少し倍率を高めにして背景の青空を暗くしてあげると見やすくなると思います。(太陽は決して見ないように注意!)※6/10の月の出時刻は東京で11:22です。
月面Xの今後の見頃の情報や歴史についてはこちらのサイトが非常に詳しいです。ちなみに今年一番の見頃は2019年12月4日(水)です。今から手帳に書いておきましょう。(ただ、この日が晴れるとは限りません。条件が悪い日でも晴れていればチャンスはありますので、諦めずにチャレンジしてみましょう!)最近は「月面LOVE」というL・O・V・Eという4つの地形が同時に見える現象も知られ出しました。詳細はこちらから。もし天気が悪くて見れなかった時は、過去に撮影した自分の月面写真に写っていないか探してみましょう!
さて、次回の月面名所案内はいよいよ来月に迫ったアポロ11号着陸50周年を記念して「アポロ11号着陸地点」をご紹介する予定です。お楽しみに。東田さん、今回もご協力本当にありがとうございました。

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アポロ11号月面着陸50周年
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■月面:東側火口列 撮影:東田守生様(大阪府)※上を南に表示
この画像は上を南に表示しています。今晩6/6は貴重な晴れ間になるかもしれません。もし晴れたら上のクレーター達を探してみてください。それぞれ特徴があり改めてご紹介する予定ですが、光が斜めから当たっていることもあり、とても見応えのあるクレーター群です。
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■月面:危難の海 撮影:東田守生様(大阪府)※上を南に表示
この画像も上を南に表示しています。東側火口列の北側に位置します。三日月で一番目立つ海です。危難の海も後日紹介する予定ですが、見所がたくさんあります。この月齢の頃にしか見えない地球照もお見逃しなく!